
指す場所が毎回違っても、歯科医院に相談してよい理由
「ここが痛い」と指した歯が、夜には反対側に変わっている。小学校低学年のお子様では、よく見られる様子です。痛む歯が分からないまま電話してよいのか、仕事を早退してまで受診すべきか、迷う保護者の方もいるでしょう。痛む場所が特定できなくても、痛み始めた時刻や食事への影響が分かれば、歯科医院への相談は始められます。この記事では、受診を急ぐ目安、親子で確かめる項目、受診までの過ごし方、電話での伝え方を順に整理しました。
この記事の要点まとめ
- 食事や睡眠に影響する痛み、腫れや発熱がある場合は、歯科医院へ電話で相談する目安です。
- 痛む場所が定まらなくても、開始時刻・頻度・食事への影響・腫れなどを記録して伝えましょう。
- 受診までは刺激の少ない食事を選び、薬の対象年齢や用量を確認し、迷う場合は専門家に相談しましょう。
子どもの歯が痛いとき、いつ受診を相談する?

食事を残すほど痛がる、夜も眠れない。そんな様子があれば、痛む歯が分からなくても当日中に歯科医院へ電話で相談する目安と考えてください。子どもの歯痛については、多くの研究をまとめた報告で、その頻度やむし歯の経験との関連が検討されています1。
ただし、痛む場所だけで原因を決めることはできません。症状によって相談先が変わる点も、あわせて押さえておきましょう。
食べられない・眠れない痛みは、どのくらい急ぐ?
食事の量が明らかに減った、痛みで夜中に目を覚ます、半日以上痛みが続いている。こうした状態は、仕事の調整も含めて早めの受診を考える段階です。
「どの歯か分からない」は、電話を控える理由になりません。低学年のお子様が痛む歯をうまく指せないのは自然なことで、場所の確認は診察で行います。当日の受診が難しい場合でも、症状を伝えれば、いつ頃診てもらうのがよいかを相談できます。
歯ぐきがぷっくり腫れたら、何を確認する?
腫れは「範囲」と「全身の様子」を分けて見てください。確認したいのは次の点です。
- 腫れが歯ぐきの一部にとどまっているか、頬まで広がっているか
- 白や黄色の膿のようなものが見えるか
- 熱があるか(測った体温と時刻)
- 口を開けにくそうにしていないか
生え変わりの時期だから、と決めつけないことも大切です。むし歯が進み、歯の根の先に膿がたまって腫れることもあるため、原因は診察で確かめます。
顔の腫れや外傷があるとき、歯科以外への相談は必要?
腫れが急に広がる、飲み込みにくい、息苦しそうにしている——この場合は歯科を待たず、救急相談や救急受診を優先してください。顔の腫れに高い熱が重なり、ぐったりしているときも同じです。
転んで歯を強くぶつけたときは、痛みが軽くても早めに歯科医院へ連絡しましょう。夜間や休日は、子ども医療電話相談(#8000)や、自治体・地域の歯科医師会が案内する休日夜間の診療窓口を利用する方法があります。
痛む場所が曖昧なら、親子で何を確かめる?

歯の位置を特定するより、「いつ」「どんな場面で」痛がるかを記録するほうが、電話では伝わりやすくなります。お子様の言葉と、保護者が見て気づいたことを分けて書き留めておくと、歯科医師も状況を想像しやすくなります。
痛み始めた時刻と、食事との関係はどう聞く?
質問は短く、ひとつずつ。「いつから痛い?」「かんだとき?何もしていないとき?」「冷たいものを飲んだとき?」と聞けば、低学年のお子様でも答えやすいはずです。
記録は、次のような形で十分です。
| 確認すること | 記録の例 |
|---|---|
| 痛み始め | 昨日の給食後から |
| 頻度 | 食事のたび/ときどき/ずっと |
| 強さ | 遊びは続けられる/泣くほど |
| 食事への影響 | 今朝は朝食を半分残した |
強さは数字で答えさせるより、遊びや食事を続けられたかで見るほうが、小さなお子様でもぶれにくくなります。
場所が毎回違うとき、どこまで見ればよい?
お子様が指した場所は、前回と違っていてもそのまま記録してください。痛みの感じ方や言葉での表し方には個人差があります。子どもの痛みの表現や行動は研究でも扱われています2。
保護者が見るのは、明るい場所で見える範囲の変化です。頬や歯ぐきの腫れ、出血、歯の欠けや黒い部分、グラつきがあれば、スマートフォンで撮っておくと説明に役立ちます。口を無理に開かせたり、痛む所を指で押して確かめたりするのは控えましょう。
生え変わりの時期なら、痛みは様子見でよい?
乳歯がグラついていたり、新しい歯が生えかけていたりしても、食べにくさや腫れがあるなら歯科医院へ相談してください。生え変わりに伴う違和感のほか、歯と歯の間に食べ物が挟まった、乳歯にむし歯ができているなど、原因は一つとは限りません。むし歯は子どもの歯痛と関わりの深い要因の一つです1。
乳歯や生えたばかりの永久歯は、むし歯が進みやすい時期でもあります。家庭で原因を決めつけず、見たことをそのまま伝えてください。
ポイント
痛む場所が分からなくても、時刻・食事との関係・見た目の変化を記録すれば、電話で状況を伝えられます。
受診まで、食事と痛みにはどう対応する?
受診までは、痛みを強める刺激を減らして過ごすのが基本です。薬で痛みが和らいでも原因がなくなったわけではないので、歯科医院への相談は続けてください。
食べ物や飲み物はどう選ぶ?
最初に、水分がとれているかを確認します。水やお茶が飲めていれば、食事は量より食べやすさを優先して構いません。
おかゆ、うどん、豆腐、卵料理など、あまりかまずに食べられるものが向いています。熱すぎるもの、冷たすぎるもの、硬いもの、甘いお菓子やジュースは痛みを強めることがあるので控えめに。痛まない側でかむよう声をかけ、食後は軽く口をゆすいでおきましょう。
夜間に痛がったら、何を避ける?
楽にさせたい一心で、かえって痛みを強める対応をしてしまうことがあります。避けたいのは、腫れた所を強く押したり揉んだりすること、カイロや長風呂で患部を温めること、市販の薬を歯や歯ぐきに直接置くことです。
頭を少し高くして横になる、濡らしたタオルを頬の外側に軽く当てるといった方法で落ち着く場合もあります。眠れないほど痛む、腫れが広がってきたといった変化があれば、夜間の相談窓口の利用を検討してください。
痛み止めを使う前に、何を確認する?
使う前に、製品に書かれた対象年齢と体重ごとの量、いま飲んでいる薬、アレルギー、持病を確かめてください。米国歯科医師会などがまとめた小児向けの指針では、抜歯後の痛みや、歯科治療をすぐに受けられない場合の歯痛に対する薬を使った対応が示されています3。
お子様に使う鎮痛薬の種類は、医師にご相談ください。大人用の薬を自己判断で分けて飲ませるのは避けましょう。迷うときは薬剤師や医療機関に相談し、使った薬の名前と時刻は受診時に伝えてください。
天理市のちか山歯科医院へ、痛みをどう伝える?
痛む歯が分からなくても、食事への影響と症状の経過を伝えていただければ、受診の時期を一緒に相談できます。電話の前にメモを用意しておくと、勤務の合間でも落ち着いて話せます。
電話の前に、何を手元に書き出す?
メモには次の項目を並べておくと、聞かれたときにすぐ答えられます。
- お子様の年齢・学年
- 痛み始めた日時と、そのとき何をしていたか
- 指す場所が変わること、痛む頻度
- 食事や睡眠への影響
- 腫れ・発熱・外傷の有無
- 飲んでいる薬、使った痛み止め、アレルギー、持病
- これまでの歯科受診の経験
- 受診できる時間帯(下のお子様のお迎えなども含めて)
当てはまらない項目は「なし」、分からない項目は「不明」と書いておけば足ります。
痛む歯が分からない場合、電話ではどう言う?
分かっている事実から話し始めると伝わりやすくなります。読み上げる例を挙げます。
「小学1年生の息子が、昨日の給食後から歯が痛いと言っています。指す場所は毎回違い、どの歯かは分かりません。今朝は朝食を残しました。腫れは見当たらず、熱はありません。痛み止めは使っていません。」
確認できていないことを推測で補う必要はありません。「奥歯だと思う」と迷うより、「場所ははっきりしません」と伝えるほうが、受付も状況を把握しやすくなります。
初診では何を伝え、どのように進める?
症状のメモに加えて、お子様が歯科を怖がっていること、保護者として気になっていることも遠慮なくお話しください。当院への相談では、痛みがある場合に応急処置が必要かどうかも相談できます。
痛みが強い日にどこまで進めるかは、お子様の状態と気持ちを見ながら、保護者の方と相談して決めることが大切です。必要と判断された場合はレントゲンや歯科用CTで原因を確かめ、麻酔を使う場面では痛みへの配慮や方法について説明を受けてから進めることが大切です。
痛いときだけ来院する状態が続くと、お子様にとって歯科医院が「怖い場所」になってしまいかねません。痛みが落ち着いたあとは、フッ素塗布や仕上げ磨きの相談を含めた定期的な管理について、ご家族で考えていただけたらと思います。
ポイント
メモを手元に置いたら、まずはお電話で相談を。痛む歯の特定は、診察の場で一緒に進めていきます。
よくある質問
Q. 電話をする前に痛みが治まりました。受診はしなくてもよいですか?
A. 歯の痛みは、原因が残ったまま一時的に治まることがあります。むし歯が進んで、かえって痛みを感じにくくなっている場合もあるため、一度歯科医院で状態を確かめておくとよいでしょう。治まった時刻もメモに加えて伝えてください。
Q. 子どもの歯は、どの順番で生え変わりますか?
A. 生え変わりの時期や順番には個人差があります。歯の生え方で気になる点は、定期健診で医師にご相談ください。
Q. 小学校高学年になって、いちばん奥が痛むと言います。何が考えられますか?
A. 第二大臼歯(12歳臼歯)が生えてくる時期には、かぶさった歯ぐきに汚れがたまり、腫れや痛みが出ることがあります。生えたばかりの歯は溝が深く、むし歯ができやすい面もあります。原因は診察で確かめますので、食べにくさがあれば早めにご相談ください。
Q. 歯科を怖がる子に、受診前どう声をかければよいですか?
A. 「痛いところを見てもらって、楽にしてもらおうね」と、目的を短く伝える声かけが向いています。「注射」「抜く」など処置を想像させる言葉は、事前には控えたほうが落ち着きやすいでしょう。怖がっていることは受付やスタッフにも共有してください。
Q. 受診当日は何を持っていけばよいですか?
A. 健康保険証(または資格確認書類)、子ども医療費助成の受給者証、お薬手帳、症状を書いたメモがあると手続きと説明がスムーズです。撮影した口の中の画像があれば、あわせてお見せください。
参考文献
1. Santos PS, Barasuol JC, Moccelini BS, et al. Prevalence of toothache and associated factors in children and adolescents: a systematic review and meta-analysis. Clinical Oral Investigations. 2022. PMID: 34791550 / DOI: 10.1007/s00784-021-04255-2
2. Delgado A, Ok SM, Ho D, et al. Evaluation of children's pain expression and behavior using audio visual distraction. Clinical and Experimental Dental Research. 2021. PMID: 33622030 / DOI: 10.1002/cre2.407
3. Carrasco-Labra A, Polk DE, Urquhart O, et al. Evidence-based clinical practice guideline for the pharmacologic management of acute dental pain in children. Journal of the American Dental Association. 2023. PMID: 37634915 / DOI: 10.1016/j.adaj.2023.06.014
1988年 有山歯科診療所学園前 勤務
1992年 ちか山歯科医院 開院
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